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白濁(六十一)

by 野原海明

 高橋を畳に転がしたまま、私はソファーで毛布を被って寝た。

 翌朝、青白い顔で目覚めた高橋に水の入ったグラスを手渡す。高橋は喉を鳴らしてひと息に飲み干した。

「……ごめん」

 小声で言った。

「俺、なにもしてない?」

「うん、今日は」

「なんだ」

 また、ぱったりと畳に横たわる。

「シャワー、借りていい?」

 上目遣いで言った。

「いいよ」

 高橋は頭が痛いとかぶつくさいいながら、台所で服を脱いだ。一人暮らしのアパートには脱衣所なんて無いのだ。狭い風呂場に入って扉を閉める。上背のある高橋にはきっと窮屈だろう。

 シャワーの音を聞きながらお湯を沸かし、梅干しを入れた番茶を淹れる。ずぶ濡れで出てきた高橋の長い髪をバスタオルで、大型犬をそうするみたいにガシガシと拭いてやる。高橋は背をかがめて、されるままになっていた。

 二人でちゃぶ台を囲み、老夫婦のように梅番茶を飲んだ。毎朝そうしているみたいに。

「仕事は?」

 高橋が訊いた。

「今日は休み」

「そっか」

 高橋は抱えていた膝を離し、長い脚を投げ出した。

「ほんと、ごめん。彼氏、泊まって行くことになってたんじゃないの?」

「ううん、違うから」

 タケシさんが泊まっていくことはないだろう。これから先も。朝、こんなふうに二日酔いでお茶を飲むことも。

「ごめんのついでに、もうちょっと甘えてもいい?」

 高橋は姿勢を正して言った。

「……何?」

 私は警戒して訊き返した。

(つづく)

 

※この物語はフィクションであり、実在する人物や団体等とは関係ありません。

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