LOG IN

白濁(五十一)

by 野原海明

「三日間休みを取ったから、最後にその間だけ全部、俺のものでいて欲しい。君が作った料理を食べて、どこにも出掛けずにずっと君の部屋にいたい」

 最後に話をする日程をメールで相談したら、坂井からはそんな返事が送られてきた。職場の昼休み、学食のテーブルでメールを開いて私はぞっとした。

 以前だったら嬉しくて舞い上がっていたかもしれない。坂井と三日も過ごすなんてことは、旅行に行くときにだってほとんどないことだったから。

 私は最後に坂井に尽くせるんだろうか。彼に料理を作るために買い物に出掛け、安い発泡酒を凍る間際の絶妙なタイミングで冷やし……AVでしか見ないような過激な下着を着けて、窮屈なストッキングにタイトスカートを合わせて、彼を待つのだ。

 坂井に気に入られるために、喜ばせるために、自分の好みは全部諦めていた。本当は、料理を作って食べてもらうよりも、一緒に呑みに出掛けたかったし、発泡酒なんかよりも日本酒が呑みたかった。レースで彩られたナイロンのティーバックなんかじゃなく、肌触りのいいコットンの下着をはきたかった。部屋の中でまでストッキングをはくなんてまっぴらで、夏が過ぎてもずっと素足にビーチサンダルで過ごしていたかった。

 苦痛の伴うセックスは、彼にやさしさが残っていると思っていたから受け入れられたことだった。お遊びのプレイでなくなった今、坂井は私をどんなふうに痛めつけるのだろうか。思いあまってそのまま、なんていうことだってあり得るのだ。

 怖かった。ただ坂井が恐ろしかった。あんなにも好きだったのに。他のことには何にも興味を持てないくらいに恋い焦がれていたのに。

 手のひらを返したような自分の冷酷さを知る。都合のいいように付き合っていたのは、彼でなく私だったんじゃないだろうか。

(つづく)

※この物語はフィクションであり、実在する人物や団体等とは関係ありません。

OTHER SNAPS