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白濁(四十九)

by 野原海明

 美里を終電間際の電車で見送り、携帯電話の設定は諦めてそのままぱったりと寝た。翌日、パソコンを開いたら、パソコンでしか使わない方のアドレスに坂井から長いメールが二通も届いていた。

 あの後、もう解約したキャリアのアドレスにメールを出したらしい。エラーで返ってきたのを見て、ブロックされたのだと思って激昂したらしい。

『そんなにひどい人間だと思わなかった』

『他に男をつくったあげくにブロックまでするのか』

『俺にだって感情があることを君はわかっていないのか』

 そんな言葉の繰り返しが、ほとんど改行もなくみっちりと画面を埋め尽くしていた。怒りをぶちまけた続けた一通目、二通目はもっと自分の感情に酔ったように、

『俺と過ごした年月は君にとっては何の意味のないものだったのか』

『ずっとそればかり考えてまったく仕事にならない、どうしてくれるんだ』

『俺はそんなふうに紙屑みたいに捨てられるしょうもない男なのか』

『このメールもきっと届かないのだろうけれど、会いたくてしょうがない』

 と、紙の手紙だったらインクが涙でにじんでいそうな、演歌みたいなじっとりとした内容だった。それは今までの坂井からは想像できない、全然知らない人みたいだった。

 私に感心なんて持っていないと思っていたのに。ただ都合のいいときにだけやってきて、あんまりノーマルとは言えない趣味のセックスをして、私の作ったものを食べて腹を満たして、ひと晩寝るとさっさと帰っていく。

 ああ、でも、それに文句も言わず七年も付き合うような女なんてそうそういないのかもしれない。私は、それでもただ一緒にいたかった。そして、今はそう思っていない。それだけ。

(つづく)

※この物語はフィクションであり、実在する人物や団体等とは関係ありません。

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