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白濁(三十三)

by 野原海明

 さあ、あとは簡単だ。

 何軒かハシゴを重ねて、最後に私の部屋へ行けばいい。

 高橋とそうしたみたいに。

 誰かに触れたくて仕方なかった。誰かの肩にしがみつきたい。こんな私の体にも、需要があるのだと教えて欲しい。

 「援助交際」がニュースになったとき、体を売る彼女たちの気持ちが私にもわかるような気がしていた。お金が欲しいわけじゃない。自分の体に値が付くことを実感したいんだ。

 誰にも、求められない、誰にも、必要とされない、自分の体に価値を付けて欲しい。欲望にさらされたい、そうしてそのまま、相手を壊してしまいたい。

 それでも困ったことに、タケシさんはあまりにもタイプじゃないのだ。太めのスラックス、どこかの家のマイホームパパ。

 坂井が懐かしかった。整った顔立ち、程良く筋肉のついた体、身勝手なセックス。

「今日は私に払わせてください。こないだのお礼に」

「お礼?」

「そう、体で払えなかったから」

 タケシさんは笑った。この人の笑い方は、好きだと思った。

「じゃあ、お言葉に甘えて」

 たいして高くもない飲み代を払い、外へ出る。日は沈んだばかりで、まだ明るかった。

「それじゃあ、僕はこれで」

 そう言うのが当たり前のように、タケシさんはにこやかに言った。

「他の店に呑みに行くんですか」

「うーん、まあ、そうかな」

「そう、ですか」

 両手に提げた買い物袋が急に重くなったような気がした。

(つづく)

※この物語はフィクションであり、実在する人物や団体等とは関係ありません。

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