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白濁(四十八)

by 野原海明

「でもさ、長かったよね。何年?」

 哀れむでもなく美里は言った。

「七年」

「なんで結婚しないのかなって思ってた」

「しないよ」

 別に、子ども産みたいわけでもないし、とは、母親になって間もない美里には言えない。

「でも、よかったんじゃない? ずるずる七年なんてさ、行き止まりみたいなもんじゃん」

「まあねえ」

 行き止まり。確かにそうだったのかもしれない。何処にも行き着かない。ただむさぼりあって、疲弊していくだけだったから。

「で、いるんでしょ?」

 美里が身を乗り出した。

「なにが」

「新しい彼氏」

 さんぴん茶のグラスをカラカラと鳴らしながら、にやにや笑う。

「彼氏……ではない気がする」

「あー、でもやっぱ男はいるんだ。どんな人?」

「そうだねえ……中年のおじさん」

「おじさん?」

「妻子持ち」

「うっわー」

 美里は大げさにのけぞった。

「結衣ってほんとにさ……」

「ほんとに?」

「不器用」

 今度は体を丸めて、くっくっくと小さく笑った。

「じゃあさ、もう一回乾杯しよう」

 と美里は言った。

「結衣の新しい恋に!」

 恋ねえ、恋じゃないとおもうんだけどなぁ、と思いながら、呑んでもいないのにハイテンションになっている美里と乾杯をした。高く掲げた青い琉球ガラスのロックグラスが、夜空に映えてきれいだと思った。クセのある泡盛が、するすると熱く喉を焼いていった。

(つづく)

※この物語はフィクションであり、実在する人物や団体等とは関係ありません。

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