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白濁(四十七)

by 野原海明

「――なんだけど、どう思う?」

「あ、え? ごめん、なんだっけ」

 もともと美里のマシンガントークにはあんまりついていけなかったのだけれど、相づちくらいはちょうどよく打てるつもりでいたのに、今日ばかりは全然話の内容が頭に入ってこない。まだほとんど操作できていない、新しい携帯のことで頭がいっぱいだったのだ。

「ええー、うそ。ちゃんと聞いててよ。結衣、今日なんか変だよ」

「ごめんごめん、実は今日、携帯買い換えてさ」

「あ、それ? ようやくスマホ? おそっ」

「いいじゃない。前の携帯だって充分使えたんだから」

「ふーん、じゃあ、なんで替えたの?」

「それは……」

 ちょうどよくはぐらかす言い訳が見つからなかった。

「別れたから」

「は? それって、あの彼と?」

「そう」

 他人の恋バナを聞くのは面白いけれど、自分の話を他人にするのは苦手だ。聞いて欲しいこともないし、相談したってなんにもならないから。それでもしつこく美里が訊きたがり、「カレシできないなら合コンとかセッティングしようか?」とまで言い出すから、当たり障りのないことだけ打ち明けていた。「写真くらい持ってんでしょ?」と言うので、たった一枚だけ携帯電話に保存していた、坂井の仕事のプロフィール写真だけ見せていた。まじまじと画面を見ていた美里は急に静かになって、「こんなふうに友達のカレシの写真見せてもらったときってさ、『すごーい、かっこいいー!』とか、思ってもないこととりあえず言うじゃん? でもさ、本当に彼、かっこいいよ。すごいじゃん、結衣。まじで感心した」なんて言っていたのだ。

(つづく)

※この物語はフィクションであり、実在する人物や団体等とは関係ありません。

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