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白濁(四十六)

by 野原海明

 思った通り、美里は先に店についていた。会うたびに、ひとまわりずつ丸く、大きくなっている。濃いアイメイクだけは学生時代とかわらない。

「結衣の好きそうな店だね。なんかすごく変」

 と美里は言った。混み合った店内に対して、マンションのちょっと広めのベランダくらいのテラス席には、美里しか座っていなかった。右手が手持ち無沙汰に宙に浮いている。子どもができる前は、いつもその指に煙草が挟まれていた。

「飲めないのがほんと残念! ほら、この『泡盛コーヒーのミルク割』とか、すっごい気になるのに」

 確かにそういう甘ったるいお酒ばかり美里は好きだったなぁと懐かしく思い出す。バーに行くと、散々ジュースみたいなカクテルを飲んだ後、いつも最後にカルーアミルクを注文していた。

「夜だけでよかったの? 観光とかすればよかったのに」

「ムリムリムリ。さすがに一日中子ども預けてられないよ。あちこち歩き回るのも疲れるしさ。いいの、たまにはゆっくりあんたと話がしたかったから」

 そう言っても、いつも一方的に話をするのは美里のほうだ。悩みに愚痴、自慢。途切れることなく、ころころと変わる話題。でも、そんな美里の話を聞いているのは別に嫌いじゃなかった。もし、学生時代にうっかり同じ班にならなかったら、決して友達にはならなかっただろうタイプ。キラキラして、にぎやかで、一生懸命アンニュイを演じようとしてみせて、めまぐるしい。そのエネルギーを近くで見ているのは、疲れることもあるけれどわりと面白い。

「それがさ、うちのダンナが――」

 二人じゃ食べきれないくらいの料理をどんどん注文して、さっそく美里は話し出す。その勢いに、ちょっと救われていた。

(つづく)

※この物語はフィクションであり、実在する人物や団体等とは関係ありません。

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