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白濁(四十二)

by 野原海明

 レスになっていたとしても、夫に不倫相手が出来ると夫婦の営みも復活するんだって聞いたことがある。旦那の何かが活性化されるのか、それに妻も触発されるのか。うっかり「やっぱりお前が一番だ」なんて睦言を吐いた日には目も当てられない。

「妻とはもうずいぶんしていない」とタケシさんは言っていたけれど、そんな舌の根も乾かないうちにその女を抱いているのだろうか。

 そう考えると湧いてくるこのどす黒い気持ちは嫉妬だろうか。

 いいように遊ばれて捨てられるんだろうか。都合のいい女としてずるずると、人目を忍んで付き合い続けるのだろうか。

 都合のいい女?

 それは、坂井にとっての私ではなかったか。

「AV女優ってのは凄いねえ。スタッフの俺に『口で抜いて差し上げましょうか?』とかサラっと言うんだから」

 電話の向こうで坂井は上機嫌だった。非常勤講師の合間に、ロケの仕事に行っていたらしい。

「それで、してもらったの?」

「まさか。そりゃあ興味あるけど。あんたので物足りなくなったら困るだろ?」

 冗談なんだろう。わかっている。そう、冗談、なんですよね。

「そんじゃ、明日、やっと休み取れたから行くから。ビール買っといて」

 私の予定も聞かずに、当たり前のように言う。それはそうだ、私は坂井とそうなってから、仕事意外に予定なんて入れたことはないのだから。

「ごめんなさい、明日は、学生時代の友達が泊まりにくるの」

 咄嗟に嘘をついた。

「ああ、そう。じゃあまた連絡する」

 電話はあっさりと切れた。何ヶ月ぶりかの電話だったのに、なんの余韻も無く。私の返答を待つ間も無く。

(つづく)

※この物語はフィクションであり、実在する人物や団体等とは関係ありません。

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