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白濁(四十)

by 野原海明

「いい部屋だね」

 そう言うタケシさんは六畳のアパートには全然似合わない。一人暮らしを始めた娘の家に遊びに来たお父さんみたいだ。そのシャツの、ぽってりと出たビール腹ならぬホッピー腹に触れてみる。タケシさんはあごをひいて私を見下ろした。男性としては小柄なほうだと思っていたけれど、そうやって向かい合って立って見ると、私よりもちょっとだけ背が高かった。

 おずおずと手のひらをお腹に這わせる。もっとぽよんぽよんとしているのかとおもったけれど、わりと張りがいい。タケシさんの両手が私の腰に置かれ、右手がシャツの中へ滑り込んで背中を這う。乾いた手のひらは、ブラジャーのホックをひとひねりで簡単に外した。

 口の中に侵入してきた舌は私の前歯の裏を執拗にくすぐった。負けじとその舌に軽く歯を立て、舌裏を舌の先でなぞった。

 服を脱ぐ間ももどかしくそのまま交わったけれど、それじゃあまだ物足りなかった。開きっぱなしの押し入れの上段に手を突いていた私を前に向かせると、ひとつひとつ丁寧に私のシャツのボタンを外していった。下着は乱雑に脱がせたくせに、やたら丁寧に。

 畳の上に私をうつ伏せに寝かせると、

「全部触らせて」

 と

 両手で私の体に触れる。つま先、かかと、ふくらはぎ、太もも、お尻、腰、背中、肩、両腕、両手、首筋、耳、頭。ゆっくり、ゆっくりと、何かを手のひらで染み込ませるように。仰向けにさせて同じように全身に触れた後、脚を開かせると、またおずおずと私の中に収まった。

 そのまま動かずに全身で触れていた。体の触れ合っているところ全ての境界があやふやに融けて消えて行くような気がした。

(つづく)

※この物語はフィクションであり、実在する人物や団体等とは関係ありません。

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