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白濁(三十七)

by 野原海明

「キンミヤ、赤玉ポートワイン、マッコリ」

「だろ? ちょっとおねえさん、省略して言ってごらんよ」

「えーと? キン……、え、やだあ」

「だからさあ、ちょっとあんまりだから、『夏の雪』って名前が付いたってわけよ」

 男はアロハの背中を得意げに反らして言った。

 赤く澄んだ液体の中に、ゆっくりと白い靄が滲み降りていく。

「これ、混ぜてから呑んだほうがいいんですか」

 手持ち無沙汰にしていた店主が答えた。

「人それぞれですね。混ぜる人もいれば混ぜない人もいる」

「はあ」

 自然に混ざり合っていく様子が綺麗だったから、私はそのままで口をつけてみた。

「甘」

 赤玉ポートワインのかき氷のシロップみたいな甘さと、マッコリのヨーグルトみたいな甘さ。炭酸水がそれを和らげているけれど、確かにジュースみたいだ。キンミヤの強さは感じない。でも、さっきレモンサワーと同じだけ入れているのを見た。ポートワインとマッコリが入っているだけ、レモンサワーよりもアルコールは強いのだと思う。

「これ、肴は何を頼んだらいいか、悩みますね」

「そうお? わりと何にでも合うのよ」

 カウンターの奥から女がよく通る声で答えた。

「でもまあ、デザートみたいなもんよね」

 女の皿にのっているのは、無花果の白和だろうか。

 ホワイトボードに書かれたメニューは、数は少ないけれどどれも凝っていた。

(つづく)

※この物語はフィクションであり、実在する人物や団体等とは関係ありません。

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