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白濁(二十三)

by 野原海明

「さんざん親にわがまま言ってきたし、そろそろお母さんの期待にこたえなきゃなって」

 美里はそんなことを言っていた。さっぱりとした顔をしていた。

「なにそれ。それが結婚なの?」

「まあね。『もっとちゃんとして、まっとうに、きちんと』生きることにした」

 結婚式は明治神宮だった。華やかな、きちんとした、一生に一度のステージ。

 ああ、なんてつまらない。

「あたしね、仕事始めたの」

 ロシアンミルクティーをすすりながら美里が言った。

「へえ

「ライター。面白いよ、アクセスが伸びるとポイントがたくさんつくの」

「ポイント? 報酬が?」

「そう」

 それがたくさん溜まると、通販で雑貨やコスメが買えるらしい。

「結衣もやってみたら? レポートとかまとめるの、得意だったじゃない」

 そうだ、美里が集めてきた資料を、私が整理して、構成して、文章にしたんだった。

「いや、いいよ私は」

 美里が書いたという記事を見せてもらいながら言った。

『きちんとして見えるのに時短! ママメイク』『一生愛されるメイクラブ♡テクニック』

「すごいね、こんなこと考えながらしてるの?」

「そんなわけないじゃない、めんどくさい」

 そういえば「セックスはやっぱり、愛なんだと思う」と、真面目な顔をしてわかったように言っていたのは学生時代の美里だった。「違うよ、欲だよ」と、ぶっきらぼうに言い返した。

(つづく)

※この物語はフィクションであり、実在する人物や団体等とは関係ありません。

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