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白濁(二十二)

by 野原海明

 大学を卒業してから、同性の友達ができなくなった。それは、坂井とばかり会っていたからではあるけれど、それだけじゃないと思う。例えば、懐かしい男友達から連絡があれば、すぐさま東京にまでも出掛けて行くのだから。

 

 美里には、彼女が母親になってから一度だけ会いに行った。高円寺の、彼女がよく行くという喫茶店で待ち合わせる。

 学生時代よりもふくよかになった美里が、カフェの階段を昇って来る。くりくりとした大きな目にきっちりと引いた黒いアイラインは、昔と変わっていない。そんなに色が白かっただろうか? むっちりとした腕はマシュマロのように美しい。

 携帯の待ち受けになった娘の写真を見せてくれた。「かわいね」と、お決まりのように棒読みで言う。実際のところ、赤ん坊を可愛いと思ったことは一度もない。というか、どちらかと言えば「気持ちが悪い」。肌色の芋虫を連想してしまうのだ。でも、本物の芋虫は「わりと可愛い」と思うのだから矛盾している。ただ単に私は、人間が嫌いなのかもしれない。

 たぶん、男を除いて。

 美里とは、教育学の授業で知り合った。たまたま、近くの席に座った者同士で班をつくってレポートを書くという課題が出たのだ。そうじゃなきゃ、自分から進んで友達にはならないタイプだ。きっちりとした、ファッション誌そのものみたいなメイク。いつも明るい色のひらひらしたスカートを穿いていた。男に媚びるタイプなのかと思ったら全くそうではなく、気が強く気っ風が良い。彼女の就職活動は見事だった。私が大学にも行かずぐだぐだとしている内に、いくつもの説明会を受けOG訪問をこなし、さっさとテレビ局の内定を手に入れた。

 そのくせ、その内定を蹴って、研究者だった彼と結婚して家におさまったのだ。

(つづく)

※この物語はフィクションであり、実在する人物や団体等とは関係ありません。

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