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白濁(十六)

by 野原海明

「わざわざありがとうございました」

「いえいえ、別にすることもなかったし」

 それは本当だ。予定の無い土曜日、坂井にメールしてみたところで返事が返って来ないのはわかっている。

「そうだ、白石さん、Facebookってやってますか?」

「一応。登録はしたんですけど、投稿とかはしてないです」

「そうですか。僕も最近始めたばかりなんですけど、ちょいちょい写真とか上げてるんで、よかったら友達になってやってください」

 階段を降りる。外の陽射しが照り返して眩しい。

 帰りの電車で、めったに見ることのなかったFacebookを開いてみる。わずかに高校時代の友達とだけつながったタイムラインは、早婚の彼女たちの子どもの写真ばかりで埋め尽くされている。

 高橋修二はすぐに見つかった。友達申請とメッセージを送る。瞬時に返事が返ってきた。

『今日は遠くまでありがとうございました。また鎌倉に行くとき、連絡しますね』

 プロフィールの交際ステイタスは、「独身」になっていた。

 坂井はこのところ忙しいらしい。学校は夏休みに入って授業はないけれど、掛け持ちしている他の仕事に追われているらしい。

 と言っても、私は坂井が非常勤講師以外に何の仕事をしているのかよく知らない。

 ときどき、思い出したようにメールが届く。

『会いたい。会いたくてたまらない』

 不意打ちのように胸を突く。

 知り合ってから七年経った今でも、変わらずに。

(つづく)

※この物語はフィクションであり、実在する人物や団体等とは関係ありません。

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